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■ 特別支援教育 --ADHDとLD理論の落とし穴--

2004年12月には発達障害者支援法案が可決され、その適用が2007年4月から本格的に全国の学校で始まった。この法律によって、集中力に欠けたり極度に活動的な児童たちは、ADHD(注意欠陥多動性障害)やLD(学習障害)などの脳機能の障害を持つと診断され、「特別支援」の名の下に覚せい剤と本質的に同種の中枢神経刺激剤を摂らされることとなる。

市民人権団体によって行われた調査によると、薬を摂らなければその児童は学校に来てはいけないというように、学校が親や児童に対して薬物の摂取を強制するというかたちでこの法律を実施している学校も少なくないという。

精神医療によってこういった問題を対処するアプローチは、一見理にかなっているようにも見える。その対処法は、次のような仮説に基づいている。人が奇妙な振る舞いをするのは、体内における化学物質が欠如しているためで、人工的にその化学物質を供給することで、児童の奇妙な振舞いや、さまざまな障害は矯正される、というものである。

しかし、前に述べたようにこの仮説には、科学的また医学的根拠がまったく存在しない。1998年に米国国家厚生施設が開催した、専門家による「ADHDの診断と治療に関する合意会議」もまた、以下のように結論付けている。「現在のところADHDに関する独立した正当な基準は存在しない。ADHDを脳障害として確立するにはさらなる研究が必要とされる。(中略) ADHDに関して数年にわたって行われた臨床研究また経験の結果、ADHDの原因に関する私たちの知識はいまだ推論の域を越えない。」

米国の学者メアリー・アン・ブロックは自著『ノーモアADHD』の中で、このような診断の曖昧さを厳しく指摘している。ブロック博士は、そうした診断は主観的で、その決定をする人の先入観や見え方によって決定されると論じる。もしその人が、子どもは静かに座りおとなしくしているべきだと信じているならば、その子どもは多分ADHDという診断を受けるだろう。しかし、もし子どもは動き回り、もじもじしているのを許されるべきだと信じている人であれば、その子どもは正常と考えられよう。

ブロック博士は次のように言う。「精神医学者は、いかなるテストもしていない。彼らは識別診断をすることを学んだはずである。識別診断をするには、身体面の検査、ラボ検査、アレルギーテスト、そして食事の評価をしなければならない。医師は、その症状の理由を決めるためには、可能なすべてのことをするべきである。病歴を聴いただけで、精神医学的診断をして、薬を与えるべきではない。」

さらに注目すべきことは、ADHDの「生みの親」である精神科医ロバート・スピッツァーが、診断される多くの児童が実際には病気ではないかもしれないと認めているという事実である。スピッツァー医師いわく、分裂症または多動性障害などと診断された児童のうち30パーセントが誤診であったかもしれないという。こうした児童の行動は、幸福や悲しみなどいたって正常な徴候かもしれず、「こうした状態の多くが、実際には病気ではなく、通常の反応であるかもしれない」と述べている。

2005年9月には、オレゴン州大学の薬物効果検討プロジェクトの研究者たちがADHDに関して過去に行われたほぼすべての研究の結果を検討した後、731ページにわたる報告書を発表した。その報告書には、ADHDの治療のために用いられる薬物が、長期間において安全であり、また学校でのふるまいを援助する、という主張には十分な根拠がないことが記されてある。

上記のような事実にもかかわらず、2007年、日本において特別支援教育が導入された。

■ 行きつくところ

1995年に始められたスクールカウンセラー事業の導入は、結果として不登校生徒の数を増加させた。2007年に開始する特別支援教育の導入は、学校教育において何を意味するのであろうか。日本の教育は20年後にどこに行き着くのであろうか?
アメリカでは、20年も前に同様のシステムが導入されている。1987年に米国精神医学協会によって文字通り多数決によって誕生したADHD(注意欠陥多動性障害)は、科学的・医学的根拠のないまま、精神医学のマニュアルに正式に記された。その後1年も経たないうちに、アメリカだけで50万人の児童が、多数決によって承認されたこの病気を抱えていると診断された。1991年には、製薬業者による議会での激しい働きかけの後、アメリカの公立学校でADHDと診断された児童ひとりにつき400ドルが国の予算から出されることとなった。

現在アメリカ国内だけで、600万人以上の児童がこうしたレッテルの下に中枢神経刺激剤を処方されている。この数は、10年前と比べると160万人増えている。こうした「脳障害」が薬で治るなら、ADHDの子どもの数は減っているはずである。にもかかわらず、統計はその逆を示す。同時に校内暴力が急激に増加し、文盲率もまた急激に高まっている。以前に世界5位の読み書き能力を誇ったアメリカ合衆国は、現在世界28位にまで下がってしまっている。

ADHDやLDなどのラベル化によって起こる悲劇はそれだけではない。幼いころに「脳障害」のレッテルを貼られ、中枢神経刺激剤を摂らされる子どもの将来はどのようなものであろうか。2001年、兵庫県宝塚市で、ADHD(注意欠陥多動性障害)と医師に診断され、「このまま大人になると大変になる」という内容の遺書を残して飛び降り自殺した小学4年の男児の例 は、「脳障害」のラベルを貼られる子どもたちが受ける心の傷をあらわしている。

上記のように、教育問題に対する精神衛生のアプローチは完全な失敗であることがすでに証明されている。それにもかかわらず、このアプローチが現在日本で強く押されている。次のような疑問が生まれてくることだろう。ADHDという名の症状をつくり出すことで益を得ているのは誰であろう。ADHDやLDなどの症状のもとに子どもを薬漬けにすることで益を得るのは誰であろう。親や学校や社会の保護を必要とする子どもたちでないことだけは確かである。

フリーの臨床心理学研究者である小沢牧子氏は、次のように指摘する。「親も、子どものやんちゃを大目に見たり、不安がる子どもを抱いて寝てやる代わりに、最近は、『心』の専門家がいるから安心と、子どもから手を放してしまう。そして子どもの安心が失われていく。」「万事を金銭で買う生活を徹底させた消費社会は、モノを売る限界を迎えたのちに、『心』という大きなマーケットを生み出した。」

子ども時代に特有の不安定さが、「心の病」あるいは「脳障害」として診断され、幼い子どもたちが薬漬けにされている。「治療」の名のもとに、多くの幼い子どもたちが人生を奪われ、人権を剥奪されるのを許してはいけない。

社会の益を目的とするあらゆる教育システムの最終的なゴールは、能力と自発性と文化のレベルを高め、そうすることで社会のメンバーの生存レベルを高めることに向けられていなくてはならない。これは、偽りの「障害」や「診断」、また有害な薬物を学校や子供たちから取り除いたところでのみ初めて達成することが可能である。

【参考】

中日新聞 2003年1月22日
人権新聞1986年4月15日
朝日新聞1988年9月16日
産経新聞 2001年2月23日
毎日新聞(東京)2003年8月12日 朝刊
毎日新聞(東京)2003年8月12日 朝刊
文理書院発行「健康ファミリー」2003年3月号より
文理書院発行「健康ファミリー」2003年3月号より
The great ADHD myth by Jenny Hope
毎日新聞 2001年6月25日
北海道新聞2002年4月4日夕刊
薬物の真実・・・The world without the drugs. Honey You are Not Alone!
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