登校拒否などの「治療」として主に用いられるのが大量の薬物投与である。この「治療法」は、子どもたちをおとなしくさせるための最も安易な方法として、精神科医、または製薬会社によって広く宣伝されてきた。しかし、薬物の売り上げ利益の上昇と比例して、こうした薬物投与による悲惨で残酷な結果が多く生まれている。
そのひとつは、1994年、神奈川県厚木市にある精神病院の患者が薬物の大量投与によって死亡した例である。子どもの引きこもりと家庭内暴力に悩んだ母親が、県内で思春期問題の権威と言われる精神科医に受診したところ、医師は本人の受診もないままその子どもに大量の薬剤を処方した。さらに数週間後、改善がみられないと投与量を増量した。1ヶ月ほど経った後、本人が左腕のこわばりを訴えたことで、初めて受診し、約1ヶ月半にわたる数回の通院治療のあと、医療保護入院となった。そして約50日後の夜に急死している。
小田原地裁による鑑定結果は、治療方法について「最大の問題は薬物量が異常に多いこと」「薬物選択、組み合わせいずれにも問題がある」「医学的常識をはるかに越えている」とし、死因については「薬物の大量投与が急性心臓死にいたらしめた」と結論づけた。
他にもこうした例はある。ベストセラー『買ってはいけない』の著者で地球環境問題評論家の船瀬俊介氏の長女(当時14歳)は、不登校で家に閉じこもりがちになったことを理由に、2000年4月に埼玉医科大付属病院の精神科に入院し、投薬治療を受けた。強力な向精神薬「ハロペリドール」を両腕・体幹・両足を縛り付けられた状態で点滴投与され、入院わずか1ヵ月後に、発熱や意識障害など向精神薬の副作用である「悪性症候群」で死亡した。 主治医は、薬品の安全性について尋ねた船瀬氏の妻に『信用できないなら病院を替わってもらってもいい』と言い放ったという。船瀬氏は、「副作用はあくびやのどの渇きといわれて治療を受けたはずの娘が、なぜ死ななければならなかったのか。誰の身にも起こりえるからこそ、うやむやで済ませるべきではない」として、主治医を殺人罪で訴えた。
「悪性症候群はあらゆる文献で向精神薬の副作用の筆頭にあげられており、回避するには副作用の兆しが見えた時点で投薬をやめるしかないんです。それなのに主治医のT医師は、かえって3倍、4倍と増量していった。それがどんな結果を招くか、医者なら十分に分かっていたはずです。しかも、病院側によれば過去5人の悪性症候群の患者のうち、4人が亡くなっている。これはもう過失とは呼べないと判断しました。」船瀬氏は、殺人罪での告訴という異例の措置に踏み切った理由をそう説明した。2004年12月、東京高裁は埼玉医大に対して約4960万円の賠償を命じる判決を言い渡し、また2005年7月には、さいたま地裁が主治医に対して、禁固1年6月、執行猶予3年を言い渡した。
小児科勤務医であり、不登校新聞を編集する若林実氏は、不登校児が分裂症やうつ病の疑いと診断され、投薬、入院の対象とされた例はおびただしい数にのぼるであろうと指摘する。若林氏はまた、その治療と診断の正当性について次のように指摘している。「医学の世界では(中略)客観的な証拠が必要条件となります。それに比して、精神科では医師の主観的判断がかなり強く、その診断を支配しているように感じてなりません。不登校問題で、いままで精神科医が果たしてきた功罪はどうだったでしょうか。長くこの問題にかかわってきた人々は、よくご存知のはずです。」 |